「ミスター・ラグビー」とともに決勝戦を-。11月2日のラグビー・ワールドカップ(W杯)決勝戦のパブリックビューイング(PV)が、関西ラグビー発祥の地、下鴨神社(京都市左京区)で開かれる。世界遺産が会場となるPVは異例だが、今春からラグビー関係者有志が一から計画してきた。日本へのW杯誘致に尽力し、3年前に53歳の若さで亡くなった平尾誠二さんへの思いがこめられている。(江森梓)
「平尾さんと一緒に、W杯を見たかった」。こう語るのは、計画の中心になっているラグビー元日本代表の杉本慎治さん(55)=京都市北区。平尾さんの2年後輩で、京都市立伏見工業高(現京都工学院高)、同志社大、神戸製鋼でともにプレーしてきた。
杉本さんの記憶に残る平尾さんは、いつもスポットライトの中心にいた憧れの存在だった。「プレーはすごいし、かっこいい。それでいて心が温かくて、リーダーシップもあった。全部あるってずるいですよ」
神戸製鋼での主将時代、練習方法を抜本的に見直し、日本選手権7連覇の礎を築いた。引退後に家業の工務店を継いだ杉本さんが仕事の関係で講演を頼んだ際は、「それでお前の顔が立つならば」と快く引き受けてくれた。
そんな平尾さんがよく口にしていたのが、「おもろい」という言葉だ。ラグビーでいい作戦を思いついたときや、気の利いた飲食店を紹介したとき…。笑顔で「それ、おもろいやんけ」と言われると、何歳になってもうれしかった。
今回のPV開催、平尾さんならばどうしたら「おもろい」と言ってくれるだろうか。ふと、思いついたのが、平成29年にW杯の1次リーグ組み合わせ抽選会が京都で開かれた際、各国チーム関係者が大会の成功祈願に訪れた下鴨神社だった。
境内の糺(ただす)の森にある末社・雑太社(さわたしゃ)には、関西ラグビー発祥に由来する碑がある。「世界最高峰のプレーを世界遺産で見られるとしたら、『おもろい』って言ってくれるかも」。同志社大の大先輩で関西ラグビー協会の坂田好弘会長らに協力を仰ぎ、準備を重ねた。
世界遺産でのPVが発信されれば、ラグビー文化の普及にもつながる。「平尾さんは、多くの人にラグビーを楽しんでもらうことを望んでいた。喜んでくれるはず」と杉本さん。「結局今も、平尾さんにほめられたくてやってるんやな」と照れ笑いを浮かべた。
PVは、11月2日午後5時~同8時(キックオフは同6時)に雑太社前で実施。開催資金をクラウドファンディングで募集しており、寄付した約500人を招待する。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース